相続法改正②

前回は配偶者居住権についてお話しさせていただきましたが、第2回目は自筆証書遺言の方式の変更及び法務局による遺言書保管制度の創設について考察してみます。

主な改正点
・自筆証書遺言の全文を自書しなくても良くなった。
・自筆証書遺言を法務局で保管してもらえるようになる。

<改正の趣旨>
まず、遺言の種類には自筆証書遺言、公正証書遺言及び秘密証書遺言の3種類があります。今回はその中の自筆証書遺言についての改正になります。

改正前の法律では、自筆証書遺言の要件としては、遺言の全文、日付及び氏名を自書(自分で書くということ)し押印をしなければならいとされていました。

今回の改正では遺言の全文を自書するとの要件が緩和され、相続財産の一部または全部を自書ではなくパソコン等で作成することも認められこととなりました。(署名・押印は必要です。)

相続財産が多い場合にも、全ての文を自書するとなると体が不自由な方にとっては相当な負担になり作成を躊躇われてしまう方もいらっしゃったかと思います。

自筆証書遺言は公正証書遺言や秘密証書遺言と違い公証人の立会いも費用も不要ですのでやろうと思えばすぐにでも作れますが、前述のとおり全てを自書するのは人によっては相当な負担になることもあります。

そこで、今回の改正により自筆証書遺言の作成のハードルが下がりますので、遺言書作成の増加につなげる狙いもあるのではないでしょうか。

また、自筆証書遺言のデメリットとして、①家庭裁判所による検認が必要、②紛失・盗難・改ざんのおそれがあることが挙げられますが、そのデメリットの解決策として法務局による遺言書保管制度も創設されました。(※令和2年7月10日より開始)

法改正後に自筆証書遺言を作成したからといって必ずしも法務局に遺言書を保管する必要はありませんが、保管することにより前述のデメリットを解消することができます。

保管制度を利用することによる具体的なメリットは①家庭裁判所の検認が不要になる、②紛失・盗難・改ざんされるおそれがない、③遺言書情報証明書(謄本のようなもの)を取得することができ、遺言書の原本によらず当該証明書をもって登記や各種名義変更の手続きを行うことができる、⑤関係相続人等に対し一定の場合に遺言書を保管している旨の通知をしてくれる(※ただし、現時点では死亡したら遺言書の保管の事実を関係相続人に対し通知するということは難しいようです。)ことが挙げられます。

デメリットとしては、保管の申出手続き及び手数料が発生することでしょうか。
手数料については政令で定められる予定ですが、何万円もすることはないでしょう。

<まとめ>
・自筆証書遺言の財産部分についてはパソコン等で作成することができるようになった。
・自筆証書遺言を法務局で保管してもらえる。(令和2年7月10日より開始)
・遺言書を法務局で保管した場合は家庭裁判所での検認手続が不要になる。

個人的には遺言書の保管制度はメリットも多く、遺言の作成促進につながり望ましいことだと思います。

遺言は故人の最後の意思を表示する重要な行為でありますし、書き方にによっては相続人間の争いも予防できますので積極的に作成していただきたいと思っています。

今回の改正を機に遺言について検討されてみてはいかがでしょうか。

横須賀の司法書士 DARES(ダレス)司法書士事務所